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補足的な教育や社会的な活動を決定する権利

タガンログ地方宗教団体 他 対 ロシア 

No. 32401/10および他19件,2022年6月7日

「175. 虐待,暴力,または違法な強制の証拠がない限り,子どもに宗教的な教育を与えるか非宗教的な教育を与えるか,スポーツ,科学,芸術,音楽に子どもを関与させるかどうか,体系的でない自由時間を与えるか厳格な日課を与えるか,同じ考えを持つ人々と付き合うかどうかについての決定は,子どもの親,または場合によっては親権者が独占的に行うべきものである。このような決定は,国家の不当な干渉から保護されている私生活および家庭生活の範囲内にある。つまり,ロシアの裁判所が未成年者の許容できない関与とみなしたものは,実際には第9条で保護されている意味での私生活における親の信条の表明であったということになる……」。(原文は英語)

モスクワのエホバの証人およびその他 対ロシア

No. 302/02,2010年6月10日

「117. 当裁判所は,「私生活」とは,誰もが自由に自分の人格の発達と充足を追求し,他の人や外の世界との関係を確立し発展させることができる,個人の自律の領域を包含する広義の用語であることを改めて表明する。…… これらの原則に照らせば,エホバの証人が,フルタイムかパートタイムか,有給か無給かの雇用形態を選ぶこと,結婚記念日や出産,新築祝い,大学入学祝いなどの宗教的・個人的行事を含む自分にとって重要な出来事を祝うかどうか,またどのように祝うかに関して行う決定は,共同体の構成員の「私生活」の範囲に属する問題であった。

118. 当裁判所は,信者が私生活において守らなければならない教義上の行動基準を定めることは,多くの宗教に共通している特徴であることを強調する。私生活における信者の行動を規定する宗教的戒律には,たとえば,教会の礼拝への定期的な出席,聖体拝領や告解などの特定の儀式の遂行,宗教的祝日の遵守,特定の曜日における仕事の禁止 …… 特定の衣服の着用 …… 食事制限 …… その他多くのものが含まれる。宗教活動のために十分な時間を確保し,証人のものではない,あるいは世俗的な行事を祝うことを控えるというエホバの証人の規則は,その意味で,他の宗教が信者の私生活に課している同様の制限と根本的に異なるものではない。日常生活においてこれらの戒律を守ることにより,信者は自らが公言する宗教的信条を厳守したいという願いを表明したのであり,そうする自由は [欧州人権条約] 第9条によって,単独でおよび私的にその宗教を表明する自由という形で保障されたものである」。(原文は英語)

日本の最高裁判所 

平成8年3月8日判決,平成7年(行ツ)74号 

「2. …被上告人が剣道実技への参加を拒否する理由は,被上告人の信仰の核心部分と密接に関連する真しなものであった。被上告人は,他の体育種目の履修は拒否しておらず,特に不熱心でもなかった。……したがって,被上告人は,信仰上の理由による剣道実技の履修拒否の結果として,他の科目では成績優秀であったにもかかわらず,原級留置,退学という事態に追い込まれたものというべきであり,その不利益が極めて大きいことも明らかである。

4.…信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を,正当な理由のない履修拒否と区別することなく,代替措置が不可能というわけでもないのに,代替措置について何ら検討することもなく,体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて,原級留置処分をし,さらに,不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく,二年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう「学力劣等で成業の見込みがないと認められる者」に当たるとし,退学処分をしたという上告人の措置は,考慮すべき事項を考慮しておらず,又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き,その結果,社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく,本件各処分は,裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない」。