カナダの最高裁判所
「エホバの証人のハイウッド会衆(審理委員会)対ウォール事件」,2018年5月31日
「宗教団体にはだれが会員になれるかを決定し,団体独自の規則を定める権利がある。……本件のように,宗教団体の手順や規則には,宗教上の教義の解釈が関係する場合がある。裁判所が宗教上の教義に関する争訟に介入するのは妥当ではなく,制度的にも無理がある」。
イングランド・ウェールズ高等法院(イングランド・ウェールズ控訴院も結論を支持)
「フランク・コフィ・オトゥオ対英国のものみの塔聖書冊子協会 事件」,2019年6月7日
「聖書の教えに従う宗教組織が,その教えに従わない人を除名するのは,当然起こり得ることである。何よりもこれは,必須ではないとしても道理にかなったことである。もし誰かが,聖書の教えに従うことができない,または従うことを望まない場合,その人はその宗教組織に所属する資格はもうない。その人が除名されないなら,他の人に悪影響が及ぶことになり得る」。
日本の新潟地裁
令和2年4月9日判決,平成30年(ワ)71号
「本件は,……被告らに対し,人格権に基づき,本件排斥措置の中止(差止め)措置として,本件排斥措置がなされた信者として扱うことを禁止するよう求めている事案である。
……排斥措置の効力に関する判断は,宗教上の教義,信仰の内容に深く関わっており,その教義,信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができないものであるといえる。
原告の請求は,いずれも法令の適用による終局的解決に適しないものであって,裁判所法3条にいう「法律上の争訟」に当たらないというべきである。
以上によれば,原告の訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下……する」。
出典:判例時報2487号75頁,ウエストロー・ジャパン(文献番号 2020WLJPCA04096002)
日本の佐賀地裁武雄支部
令和元年11月8日判決,平成 31年(ワ)32号
「本件は,……被告らが原告にした排斥の処分は無効であると主張して,その排斥が無効であることの確認を求めるとともに,そのような無効な排斥をしたことなどは不法行為に該当すると主張(す)る事案である。
被告らがした本件排斥は,……宗教団体内部において,原告の……信者としての地位を喪失させる処分であることが認められる。そうすると,本件排斥は,宗教団体内部において,原告の宗教活動を制限し,又は宗教団体内部における宗教上の地位に関する不利益を与えるものにとどまるから,本件排斥の効力に関する紛争をもって,具体的な権利又は法律関係に関する紛争ということはできない。
したがって,本件排斥が無効であることの確認を求める原告の請求……は,法律上の争訟に該当しない。
本件訴えは,いずれも,法律上の争訟に該当せず,不適法であるから,却下する」。
出典:ウエストロー・ジャパン(文献番号 2019WLJPCA11086006)