生活と教育 > 仕事,自由な時間,祝祭日など

仕事,自由な時間,祝祭日などに関して意思決定を行う親の権利

タガンログ地方宗教団体 他 対 ロシア 

No. 32401/10および他19件,2022年6月7日

「172. …… 信者が私生活において守らなければならない教義上の行動基準を定めることは,多くの宗教に共通している特徴であり,それには教会の礼拝への出席,儀式を執り行うこと,特定の衣服の着用,食事制限の遵守などが含まれる。戸別訪問による説教や宗教集会への出席に関するエホバの証人の規則は,他の宗教が信者の私生活に課している同様の制限と何ら変わるものではない。日常生活においてこれらの戒律を守ることにより,信者は自らが公言する宗教的教義を厳守したいという願いを表明しているのであり,そうする自由は [欧州人権条約] 第9条によって保障されている……

173. 当裁判所は,[欧州人権条約の] 第1議定書第2条が,自らの宗教的信念に適合した教育および教授を確保するという親の権利を尊重するよう国家に求めていること,また,第7議定書第5条が,配偶者が子との関係において権利の平等を享受すると定めていることを改めて表明する。…… 双方の親は,異なる教義や信条を信奉している状況であっても,自らの宗教的または非宗教的信念に従って子どもを育てる権利を有する……」。

「175. 虐待,暴力,または違法な強制の証拠がない限り,子どもに宗教的な教育を与えるか非宗教的な教育を与えるか,スポーツ,科学,芸術,音楽に子どもを関与させるかどうか,体系的でない自由時間を与えるか厳格な日課を与えるか,同じ考えを持つ人々と付き合うかどうかについての決定は,子どもの親,または場合によっては親権者が独占的に行うべきものである。このような決定は,国家の不当な干渉から保護されている私生活および家庭生活の範囲内にある。つまり,ロシアの裁判所が未成年者の許容できない関与とみなしたものは,実際には第 9 条で保護されている意味での私生活における親の信条の表明であったということになる……」。(原文は英語)

モスクワのエホバの証人およびその他 対ロシア 

No. 302/02,2010年6月10日 

「117. 当裁判所は,「私生活」とは,誰もが自由に自分の人格の発達と充足を追求し,他の人や外の世界との関係を確立し発展させることができる,個人の自律の領域を包含する広義の用語であることを改めて表明する。…… これらの原則に照らせば,エホバの証人が,フルタイムかパートタイムか,有給か無給かの雇用形態を選ぶこと,結婚記念日や出産,新築祝い,大学入学祝いなどの宗教的・個人的行事を含む自分にとって重要な出来事を祝うかどうか,またどのように祝うかに関して行う決定は,共同体の構成員の「私生活」の範囲に属する問題であった。

118. 当裁判所は,信者が私生活において守らなければならない教義上の行動基準を定めることは,多くの宗教に共通している特徴であることを強調する。私生活における信者の行動を規定する宗教的戒律には,たとえば,教会の礼拝への定期的な出席,聖体拝領や告解などの特定の儀式の遂行,宗教的祝日の遵守,特定の曜日における仕事の禁止 …… 特定の衣服の着用 …… 食事制限 …… その他多くのものが含まれる。宗教活動のために十分な時間を確保し,証人のものではない,あるいは世俗的な行事を祝うことを控えるというエホバの証人の規則は,その意味で,他の宗教が信者の私生活に課している同様の制限と根本的に異なるものではない。日常生活においてこれらの戒律を守ることにより,信者は自らが公言する宗教的信条を厳守したいという願いを表明したのであり,そうする自由は [欧州人権条約] 第9条によって,単独でおよび私的にその宗教を表明する自由という形で保障されたものである。

152. 最後に,『国の祝祭日を祝うこと』は,国民の義務として法律で定められているわけではない。実際,宗教的なものであれ一般的なものであれ,祝祭日を祝うよう求める法律はない。もしそれを法的義務として求めるとしたら,ヨーロッパ人権条約第9条および第10条に抵触する可能性がある」。(原文は英語)