2024年2月9日付意見書からの抜粋:
「血液保存は,当部門におけるここ数年間の主要な取り組みとなってきました。私たちは JW(エホバの証人)向けの無輸血診療において世界で最も熟練しており,肝移植,腎移植,小児肝移植,および複雑な肝切除や膵切除の大規模コホートを有しています」。
「輸血回避の概念が成熟し,私たち自身の治療プログラムの中で受け入れられるようになるにつれて,その適用範囲をすべてのサービスライン(診療科)に拡大し,より困難な症例も含めるようになりました。現在までに,私たちの無輸血 JW プログラムにおいて,主要な血液製剤を使用せずにエホバの証人に実施した複雑な手術症例は 2500 以上に上ります。その中には,成人および小児の心臓,肝臓,腎臓移植,その他の複雑で高度な外科手術が含まれます。このデータの一部は公表されており,それを包括的にまとめた出版作業も進行中です。結果は,同等の患者タイプにおいて,非 JW 患者における結果と同等かそれ以上でした。……
偶然にも,この JW に特化した治療のためのプラットフォームは,JW 以外の患者の血液管理(PBM)においてもその居場所を見つけることとなりました。PBM は,医学的に証明された輸血回避の利点から生まれたもので,宗教上の理由ではなく,安全性とコストの観点に基づいています。過去 30 年間に,輸血回避の利点については数え切れないほどの論文が発表されてきました。これには,患者に同種血液製剤を使用した場合の罹患率と死亡率が明らかに高いことが関係しています。その他の転帰指標としては,感染率,臓器不全,腫瘍再発,早期死亡などがあります。輸血関連罹患の主な要因は,TRIM(輸血関連免疫調節)と呼ばれる現象であり,血液銀行の安全性とは関係なく,むしろドナーに由来する血液製剤に含まれる異物に対する免疫機構に内在するものです。ですから,エホバの証人が宗教上の理由で輸血を拒否することは,科学的な文献にも論理的な根拠を見いだすことができます。……
米国では,医療の方向性とその監視体制は,血液保存の実践を受け入れる方向に動いています。……コスト計算の面で考えても,入院期間,合併症率,製品コストの点で,輸血を避ける患者集団の方がはるかに有利です。したがって,血液保存という慎重なアプローチは,全ての患者の健康と,医療機関の繁栄に大いに役立つといえます」。
「最後に言っておきたいのは,安全な内科 / 外科治療とエホバの証人の信仰は両立しえないものではないということです。血液製剤の輸血が及ぼす悪影響に関する最近の科学的認識と,外科的・内科的応用技術の進歩が相まって,輸血回避はどのような患者集団においても良好な転帰を得るための最も賢明な選択となっています。輸血回避の実践を広く普及させるために残る唯一の障壁は,輸血回避戦略を学び,取り入れることができないと思われる医療従事者たちの閉鎖的な考え方です」。(原文は英語)