2024年2月26日付インタビューからの抜粋:
「2006年以降,大阪大学医学部附属病院において,輸血を拒否する患者に対して無輸血治療を提供してきました。そのほとんどはエホバの証人です。2024年2月26日時点で輸血をしなかったことが原因で亡くなった患者はおられません。
これまでの経験により,現在では,大半の手術が無輸血で行えるようになりました。こうした無輸血治療は,腹腔鏡やロボット手術,電気メスなどの出血を最小限に抑える手術手技の進歩,また診断検査の向上,さらにトラネキサム酸などの止血剤により可能になりました。
長年の研究から,患者は比較的低いヘモグロビン値でも安全に持ちこたえられる,ということが分かってきました。以前は,ヘモグロビン値をできるだけ正常な状態に近づけるために輸血が行われていました。現在では,ヘモグロビン値が 6g/dl まで下がったとしても輸血をしなくても大丈夫だということが分かっています。その結果,以前であれば輸血をしていたような人でも,今では輸血をせずに問題なく退院しています。
輸血には大きなデメリットがあることも分かってきました。輸血を受けると患者は『体が温かくなってきた』と言っていました。しかし,ランダム化試験を行い,長期的な結果を調べたところ,輸血には大きなデメリットがあることが明らかになりました。
査読済みの医学研究が示す通り,輸血を受けた患者の場合,輸血後,免疫機能は著しく低下し,癌の再発などに悪影響を及ぼします。一方,輸血を受けなかった患者は,輸血を受けた患者よりも明らかに結果が良好です。
こうした研究の結果,無輸血治療は国内外でスタンダードになりつつあり,輸血の使用は大幅に減少しています。
無輸血治療は少なからずリスクはあるものの,輸血にも相当のリスクがあるため,患者の意思を尊重して可能な限り無輸血で治療することには意義があると思います。このような無輸血治療の経験は,輸血の危険性を示す医学研究と共に,全ての患者により良い医療を提供する点で役立っています」。(原文は日本語)