2024年2月22日付意見書からの抜粋:
「……医療の専門家たちが輸血を受け入れない患者がどのように治療しているかを簡単にご説明したいと思います。
患者の血液管理(PBM)は,貧血を未然に防ぎ,出血性障害を改善し,出血を最小限に抑える是非とも実施すべき手法です。エビデンスに基づいた集学的なこのアプローチによって,血液や血液製剤の使用量が減り,よってかなりのコスト削減が可能になるだけでなく,さらに重要なこととして,患者の転帰と安全性が向上します。
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PBM の導入は切実に必要とされています。同種(ドナー)血輸血と患者の転帰に関する文献を調べれば,考えさせられます。出血していない患者にとって輸血が有益であるというエビデンスはほとんどなく,重症患者であってもそうです。気がかりなのは,用量依存的に輸血を行うと,それだけで患者の転帰に悪影響を及ぼすことを示す文献が非常に多くあり,その数がますます増えていることです。輸血は,その臨床効果を評価する研究のほとんどで,メリットが証明されていないのです。
用量依存的な同種血輸血によって有害な転帰が増加するということは,臨床のあらゆる分野で観察されています。
私は医師としてのキャリアの中で,何百人ものエホバの証人の患者を治療する機会がありました。この患者グループについては,待機的また半待機的状況では,医療介入 / 手術のためまったく問題なく備えることができます。……私たちがいつも目指しているのは,女性であれ男性であれ Hb 値が 13g/dl を超えるようにすることです。エホバの証人の転帰に関するデータは,手術により大量出血が起きる多くの状況においても変わりはありません。……入院期間,感染率,腎機能障害,死亡率といったものは,輸血を拒否しない他のグループと同等です。いくつかのケースでは,エホバの証人の患者の転帰の方が良好です。エホバの証人の患者を治療することにより,医療専門家たちは PBM をさらに発展させることできています。
エホバの証人の患者は,血液温存法のことをよく知っています。一般的に,エホバの証人の患者は医療介入や手術に関して,また治療の選択肢として何を受け入れるかについて明確な考えを持っています。前述したように,ほとんどの患者は貧血の問題や術前治療でその改善を図れること,またセルサルベージや閉鎖回路の使用について知っています。私たちの経験からすれば,エホバの証人の患者とその家族は非常に協力的で,理解があります。私たちは言うまでもなく,この患者グループとその信条を受け入れるよう医師たちに勧めます。特に最近の医学の進歩を考えると,医師が技術不足のために,あるいはおそらくPBM を導入したくないがために,エホバの証人の患者の治療を拒むなどということは受け入れられません。PBM のあらゆる選択肢を活用すれば,患者の安全性と治療成績は向上します。そういうわけで,私たちはすべての患者に PBM ストラテジーを適用しています」。(原文は英語)。