家族生活について 

エホバの証人は家族を愛しています。エホバの証人は,神が幸福と満足の源となるように家族という取り決めを設けたと信じています。また,聖書には,家族の強い絆を築き,子どもをバランスの取れた大人また模範的な市民になるよう育てるのに役立つ,時代を超えた知恵が含まれていると信じています。1エホバの証人は子どもたちに,日本社会全体が大切にしている価値観,すなわち正直さや勤勉さ,思いやり,敬意を教えています。

エホバの証人は,子どもを神からの大切な贈り物と考えており,身体面や精神面,信仰面で子どもを世話し助ける責任を真剣に受け止めています。エホバの証人の宗教上の教えには,親に愛されていると感じ,安心感を得られるように子どもを育てるための,役立つ聖書の原則が含まれています。エホバの証人の親は,子どもを教育し,子どもにモラルを教えています。それは,子どもが大人になるために必要なものを身に付け,幸せで,社会に貢献できる人になって欲しいと願っているからです。

エホバの証人の親が思いやりと愛情にあふれており,その子どもたちが模範的な生徒であることは,世界中の教育機関も認めています。以下の事例はそのごく一部です。

「このような[エホバの証人の]子どもたちはフランスの教育制度において『完璧な』生徒です,と私はよく言います」。

国家教育研究行政監察官,フランス

「……本校に通う子どもを持つエホバの証人の親は皆熱心で,子どもの教育のために教師にいつも協力的です。……エホバの証人の親の信仰を支持する子どもたちは模範的で,素晴らしい学習成果を収めています」。ティラナ小学校校長,アルバニア

「親は子どもの教育に積極的な役割を果たし,子どもにきちんと宿題をさせ,保護者会などの学校行事に出席し,学校の取り組みをサポートします。どんなときにも親は子どもを精神的に支えてケアし,家庭内での安定した関係を維持しています」。ISFウォータールー・インターナショナル・スクール校長,ロード・サン・ジュネーズ,ベルギー

「エホバの証人の実際の生活をそばで見たことのある人なら誰でも,エホバの証人の子育てが暴力的でないばかりか,逆に愛情深く,思いやり深く行われていることを知っています。……エホバの証人の子どもたちは,高い倫理観に導かれています。……エホバの証人は教育に関する自らの価値観にできる限り従い,平和的に,また政治的中立を保って生活しています。これは過激主義や心理的操作とは正反対のものです」。ヴェルナー・W・エルンスト名誉教授,インスブルック大学,政治学研究所,オーストリア

「……確かに言えるのは,エホバの証人の生徒たちが模範的で,クラスの活動に前向きで,仲間を進んで助け,協力の精神があるということです。子どもも親も礼儀正しく教養があり,どんな争いにも関与しません。……子どもたちの親は,いつも協力的で,子ども自身と子どもの成功に関心を払い, 常に気遣っています。……こうした経験から,エホバの証人の宗教グループに属する子どもや親たちに協力することは喜びである,と述べさせていただきます」。「ミハイル・サドヴェアヌ」公立学校校長,エジネツ,モルドバ

「……エホバの証人の若者たちと接した経験は,一貫してポジティブなものでした。長年にわたって私が出会ってきた生徒たちは,勉強に真面目に取り組み,良い成績を収め,教師である私に気持ちよく接してくれました。……クラスに良い雰囲気をもたらしており,学部の他の教職員からも感謝されていました」。イェーテボリ,イェーテボリ大学,スウェーデン

ヨーロッパ人権裁判所(ECHR)は,エホバの証人である親(ひいては他の宗教に属する親)が自分の子どもに宗教的な教育を与えることは全く合法的であるということを繰り返し認めてきました。「タガンログLROほか 対 ロシア」(Taganrog LRO and Others v. Russia)2 において,ECHRは次のように裁定しています。

「虐待,暴力,不法な強制の証拠がない限り,子どもに宗教的または非宗教的な教育を与えるかどうか,スポーツ,科学,芸術,音楽などの活動に参加させるかどうか,決まりのない自由な時間を与えるかそれとも厳格な日課を与えるか,同じ思いを持つ人々と付き合うかどうかなどの決定は,子どもの親または場合によっては親権者のみが行うべきである。このような決定は,国の不当な干渉から保護される私的・家庭的生活の範疇にある。従って,ロシアの裁判所が未成年者の容認しがたい関与としたものは,実際には[信教の自由]によって保護された親の私生活における信念の表明にすぎない」。

日本だけでなく,世界中の裁判所が同じ結論に達しています。

「我々は寛容な社会に生きている。母親がエホバの証人の信条と実践を支持してはならない理由はまったくない。……多くの家庭がエホバの証人として子どもたちを育て,子どもたちは地域社会の良き一員となっている」。控訴院,英国,1981年

「子どもに宗教的または非宗教的な教育を与えるかどうか,スポーツ,科学,芸術,音楽などの活動に参加させるかどうか,決まりのない自由な時間を与えるかそれとも厳格な日課を与えるか,同じ思いを持つ人々と付き合うかどうかなどの決定は,子どもの親……のみが行うべきである」。

ヨーロッパ人権裁判所,「タガンログ LRO ほか 対 ロシア」(2022 年)

「カナダ最高裁判所を含む裁判所は,エホバの証人の実践が公衆や政府にとって否定的であるとは認めていない(ロンカレッリ 対 デュプレッシ, [1959] S.C.R.121, 16 D.L.R.(2d) 689 [Que.]; ソーミュール 対 ケベック市,[1953] 2 S.C.R.299, 106 C.C.C.289, [1953] 4 D.L.R.641を参照)。また,エホバの証人の信条が子どもたちに実際の害を及ぼすと裁判所が認めたこともない。具体的な例は多くある」。ニューファンドランド最高裁判所(裁判部),カナダ,1988年

「米国憲法は,裁判所が宗教的教義のメリットを評価したり,その教義の内容を定義したりすることを明確に禁じている。……誕生日や祝日を祝ったり,忠誠の誓いを言ったり,課外活動に参加したりするなどの活動は,ほとんどの人が子どもの社会化において重要な役割を果たすと考えているが,『いわゆる規範に暗黙のうちに含まれている価値判断と,これらの慣行によって引き起こされる実際の弊害とは切り離して考える必要がある』」。ネブラスカ州控訴裁判所,米国,1995年

「……[エホバの証人の教義]が社会生活において有害であるといえないことは明らかであり,また,エホバの証人を信じるか否かは子供ら自身が決めることであるから,[母親]がエホバの証人の信者であることを理由に,直ちに親権者に適しないということはできない」。名古屋高裁平成10年3月11日平成9年(ネ)第299号

「……異なる宗教を理由とする親間の差別……は受け入れられない。両親のイデオロギーの違いは,両親のどちらか一方にとって不利な結果をもたらすことはなく,両親にとって有利にも不利にも評価されるべきではない」。ハンガリー最高裁判所,1997年

「……親がエホバの証人に帰属していることは,単独親権に適さないと判断する基準とならない。宗教的な帰属のみを理由に,親が親権を行使する適性を否定することは,信仰と告白の自由という基本的権利と相いれないものである」。ドイツ,コブレンツ上級地方裁判所,2000年

「我々は,一方の親が,他方の親の『エホバの証人』への所属を利用して,自分たちの共通の子どもをその他方の親の影響から排除すべきであると当然のごとく(de plano)受け入れることを容認することはできない。逆の判断をするならば,個人が単独で,あるいは圧力団体として,宗教や哲学の中の少数派グループを『セクト』と呼[ぶ]ようなやり方は,意識的であろうとなかろうと,少数派の良心の自由を脅かす全体主義につながるであろう」。フランス,モンペリエ控訴院,2001年

「……2000年代のイタリアのような多文化で『流れ』のある社会では,文化的標準化を拒否するマイノリティがますます広がっていることを認めなければならない。宗教的信条や世俗的な主義のために,サッカーをすることに興味がなかったり,毎年恒例のフェスティバルなどの陽気な雰囲気に賛成しなかったり,他の宗教団体の場合のようにグレゴリオ暦以外の暦でクリスマス(正教会),新年(儒教),断食月(イスラム教)を祝ったり,宗教的または世俗的な理由で特別な食習慣を必要とする人(ベジタリアン,ビーガン,採集者)がいるが,それにより未成年者の成長が損なわれるものではない」。イタリア,ナポリ控訴院,2018年

日本が批准している市民的及び政治的権利に関する国際規約と子どもの権利条約も,親が子どもにバランスの取れた宗教教育を施す権利を保障しています。

例えばツェルマッテン教授は,子どもの権利条約第5条と第18条は,子どもの能力の発達に応じて,子どもに教育(宗教教育を含む)を施す第一義的な役割は親にあると認めている,と説明しています。(ツェルマッテン教授の意見書,
7-11ページ)

「……CRC[子どもの権利条約]第5条……は,親の権利と義務の尊重および子どもを導き助言する親の責任を扱った規定でもある。したがって,親の権利は,子どもの権利の実現と子どもの能力の発達に向けられたものである。……親子関係はCRC第5条の中核を成すものであり,……子どもの進歩的な能力の尊重,親子の協力,ひいては相互の信頼関係に基づく親の立場の概念[である。]親はもはや子どもに対する独占的な権利の保持者ではなく,CRCに規定された自己の権利を子どもが享受し行使することを尊重する,子どもに対する義務の保持者である。

2つ目の重要な条項は,親の責任(親の権利ではない)に言及するCRC第18条で,子どもの養育と発達に関する子どもの親の平等な責任を定めている。この規範は,CRC第5条を補完するものであり,子どもの養育と発達に関する第一義的責任を親に直接授与し,親の決定は常に子どもの最善の利益を考慮してなされなければならないことを強調している。……CRC第18条は,親の権利を子どもの権利より優先させるものではない。『親およびその他の主たる養育者』の優位性を,子どもに対してではなく国に対して主張するものである。そうすることで,CRCは国に対し,親が責任を行使する際の恣意的な干渉を控えて親の役割を尊重する義務を与えているのである」。

「親[は]子どものビジョンとアイデンティティーを形成する存在とみなされる。子どもの宗教的人格の形成には,親の参加が不可欠なのである」。

ジャン ・ ツェルマッテン教授

「宗教に関しては,親が子どものビジョンとアイデンティティーを形成する存在とみなされる。子どもの宗教的人格の形成には,親の参加が不可欠なのである」。

「子どもの権利と親の権利の関係についてさらに考えるためには,CRC第14条とICCPR[市民的,政治的権利に関する国際規約]第18.4条を関連づける必要がある。ICCPR第18.4条は,締約国が『……父母及び場合により法定保護者が,自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する』と規定している。私としては,CRC第14条第2項とICCPR第18条第4項を連続性のあるものとしてとらえている。両者は互いに排他的なものではなく,補完的なものである。また,……子どもたちの権利と親の権利が主たる権利と従たる権利の関係にあると言うこともできる」。

ビーレフェルト教授も,「子どもの権利条約」や「市民的及び政治的権利に関する国際規約」で保障されている,子どもに宗教的な教育を施す親の権利について同じ結論に達しています。これらは全て,憲法第14条,20条,28条でも保障されています。渋谷教授は意見書の中で次のように説明しています。(ビーレフェルト教授の意見書,3,5-6ページ)

「憲法26条は,保護者にその子を教育する義務のみを明文で規定している。しかし,このような規定がなくても,当然課される,いわば自然法上の義務である。そして,その反面,保護者はその子どもを自己の教育方針に沿って教育する自由を有し,この自由は憲法が明文で言及していなくても当然の前提である。……日本では民法820条が,『親権を行う者は,子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し,義務を負う』と明文化している」。

「子どもの保護者は,以上のように子どもを自らの教育方針にしたがい教育する権利をもつという点である。保護者が子どもにほどこす教育は,子どもが社会において経済的に自立する知識と技能を授けるという意味で経済的自由の側面をもつが,同時にそれは子どもが社会において精神的に自律するために物ごとの見方と考え方を授けるという意味で精神的自由の側面をもち,つまるところ,それを制限しその過程に介入するには『真にやむをえない利益(compelling interest)』があることについての論証責任が制約する政府側にあるということである。

さらに,子どもの教育については一次的に保護者が憲法で保障された権利をもち,政府(国)は二次的にそれを補助し場合によってはそれを補完する権限をもつにすぎないのである」。

同様にラヴィッチ教授は,Q&Aガイドラインが憲法第20条に違反し,「親の子育ての権利を直接踏みにじるもの」と結論づけています。またラヴィッチ教授は国際法に関連して,親が子どもに宗教教育を与える国際法上の権利を説明している宗教又は信念の自由に関する,国連の特別報告者による2015年の報告書を引き合いに出し,次のように結論づけています。「Q&Aガイドラインは……国連特別報告者の報告書に示されたほぼすべての原則に違反している」。(ラヴィッチ教授の意見書,20,24ページ)

したがって,憲法,国際条約,および世界中の裁判所の判決は全て,エホバの証人の親が,他の全ての親と同様に,子どもの発達途上の能力を考慮しつつ,自分の信念を子どもに伝える権利と責任を有することを認めています。

また,「日本のエホバの証人 定量的研究」によると,エホバの証人は,親は「子どもが自分の意見を自由に表明する」ことを認めるべきであり,「成熟するにつれて変化する子どものニーズに合わせる」べきだと考え,そのように教えられています。

以上をまとめると,証拠も法理学も,エホバの証人の信仰とその実践が完全に合法的であり,子どもの最善の利益と一致することを決定的に示しています。

1. 家族生活に関する点を取り上げたエホバの証人の出版物の例についてはwww.jw.orgの「子育て」をご覧ください。
2. 「タガンログLROほか 対 ロシア」(Taganrog LRO and Others v. Russia),nos. 32401/10 and 19 others, § 175, 2022年6月7日。